<教育グループ>「経理マンによるビジネス財務 誌上講義⑩」

6月29日に開催される「経理マンによるビジネス財務勉強会」の内容を誌上講義にてご紹介しています。お申込みは、 こちらから→ 勉強会参加お申込み
O→勉強会進行役
K→勉強会講師(40年以上にわたり、ゼネコン・システム開発・人材紹介会社等の経理業務に携わってきた経理マン)
O:前回に引き続きキャッシュフロー計算書について、教えて下さい。
キャッシュフロー計算書から、企業の成長や倒産の危険性を読むことができると聞きましたが・・・
K:そうですね。では、A電器店のケースを少し変えて考えてみましょう。
これが、本来のキャッシュフロー計算書でした。
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まず、今期A電器店では売上の取引が2回ありましたね。これは、すべて現金で販売しました。
でも、すべて掛売りしたらどうなりますか?
O:掛売りというのは、代金の回収が後日になるということですね。
つまり、現金が入らないので、売上がたたないということでしょうか?
K:そうではありません。掛売りであっても、売上には変わりありませんので、売上は計上されます。
そして、現金の代わりに将来回収予定の債権を手に入れることになりますので、「売掛金」として、資産が増加します。
これを仕訳すると次のようになります
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O:銀行預金の代わりに売掛金が計上されました。
K:そうですね。しかし、売上高に変化はありませんので、損益計算書に変化はありません。
O:そうか!掛売りしたのかどうかわからないのですね。
K:当然、貸借対照表の資産の項目に売掛金が計上されますので、そこで読み取ることができますが、一番わかりやすいのがキャッシュフロー計算書です。
掛売りした場合のキャッシュフロー計算書は、次のようになります。
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このように営業活動によるキャッシュフローが▲200万円となりました。
税引き前当期純利益に変化はありませんが、売掛金増加によってキャッシュが入らなかったことが原因です。
O:よくわかります。
そうすると、期末の現金残高がマイナスになってしまっていますが・・・
K:そうです。つまり、借入金の50万円の返済ができないということですね。
利益があがっているのに借入金の返済ができない、いわゆる赤字倒産の危険性が高いとうことです。
O:わかりました。では、企業の成長性はどのように読めるのでしょうか?
K:A電器店のキャッシュフロー計算書には、投資活動によるキャッシュフローの項目が0でしたね。
これだと、将来に向かって、売上を伸ばすための施策が何も行われていないということです。
つまり、A電器店は、一見、優良企業に見えますが、来期以降の売上も横ばいの可能性があります。
では、ここで50万円かけて店舗を改修し、売り場面積を増やしたらどうでしょうか?
O:取扱い商品を増やすなど、色々できるような気がします。
K:そうですね。店舗を改修したことにより、将来の売上アップの可能性が高まったということです。
これを、仕訳すると次のようになります。
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資産のカテゴリーの銀行預金は減少しますが、「設備」という資産が増加します。
この取引は、損益計算書には影響を与えませんが、キャッシュフロー計算書には表示されます。
このように投資活動によるキャッシュフローに表示されるのです。
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O:マイナスになるのですね。確かにキャッシュは減少してますから・・・
K:そうです。投資活動によるキャッシュフローはマイナスの方が企業の将来的な成長が見込まれるということです。
投資活動によるキャッシュフローはマイナスであることが望まれます。
O:よくわかりました。でも、投資活動にも限度がありますよね。
K:もちろんそうです。
営業活動のキャッシュフローの範囲内で行われれば、外部の資金調達(借入金等)は必要ありません。
ただし、そのキャッシュを使って設備投資をすると、次の商品の仕入れ資金がなくなってしまいますね。
現実的には企業の財務バランスを勘案しながら、借入金等により設備投資を行うことが多いでしょう。
つまり、適切な財務活動が行われているかを財務活動によるキャッシュフローで見るということです。
O:有難うございました!
もっと質問したいことが沢山ありますが、誌上講義はここまでですね。
もう少し詳しく学びたい方は、6月29日の勉強会に参加していただけたら良いですね。
この講義では、「ビジネス財務はじめの一歩」を副教材として使用しています。
ビジネス財務はじめの一歩  
定価(税込み)1,050円 編・著者名 吉田聡著 きんざいSTORE
なお、6月29日勉強会参加費(3,500円)には、本代が含まれており、参加者の方に配布いたします。